台湾意匠特許の紹介
台湾特許法によると、意匠の設計者、デザイナー、またはその譲受人又は後継者は、自ら又は彼自身が指定した特許代理人を通じて、知的財産局に特許出願を申請することができます。台湾に住所又は事業所を有しない出願人は、特許出願及び特許関連の事務を代理人に委任する必要があります。
意匠特許を申請する場合は意匠ごとに出願しなければなりません。意匠特許における開示内容が審査により特許要件を満たすと認めた場合、出願人に意匠特許権を付与しようと通知します。
台湾の意匠特許制度において、以下に示す留意点があります。
- 先願主義:2つ以上の意匠出願案には同じ意匠を請求する場合、当該意匠が完成された時間の次序に関係なく、最も早い出願案に対し意匠特許を付与するとします。
- 一意匠一出願:意匠特許出願は、単一の物品に適用される単一の意匠(外観デザイン)のみを出願することができます。これは、いわゆる「一意匠一出願」です。換言すれば、2つ以上の意匠(外観デザイン)を組み合わせて一意匠を出願してはいけません。なお、1つの意匠(外観デザイン)のみとその適用されている2つ以上の物品を組み合わせて一意匠を出願してはいけません。当該「単一の物品に適用される単一の意匠(外観デザイン)」は、さらに(1)外観変化意匠、(2)組合せ意匠が含まれます。
- 「単一意匠(外観デザイン)」:意匠出願案には、単に一つの意匠のみを含んでいます。その意匠は、特定の形状、パターン、色を備える意匠、又は、それらを組み合わせた意匠を指します。
- 「単一物品」:意匠を適用する創作対象で、特定の目的のために特定の機能を備えたものを指す。その物品は、全体的に一つの構成単位で構成したものがよく、複数の構成単位からなるグループオブジェクト(組合せもの、キット、セット品など)もいいです。
- 「組物の意匠」:同時に使用される二以上の物品で構成する物品(以下「組物」という。)を指します。その組み物に係る意匠は、組物全体として統一があるときは、一意匠として出願をし、意匠登録を受けることができる。組み物の例として、例えば、一組の便器用付属品セット、一組の紅茶セットおもちゃ、一組のコーヒーセットおもちゃ、一組のディナーセットおもちゃ、一組の薬味入れセットおもちゃ、一組のナイフ、フォーク及びスプーンセットおもちゃ、一組のゴルフクラブセット、一組のドラムセット、一組の事務用具セット、一組の筆記具セット、一組の時計の本体とストラップ、一組のペンの本体とキャップ、一組のボトルの本体とキャップ、一組のティーカップとカップのキャップ、一組の電話機のベースと受話器、一組の衣服の隠しバックル、一組の左右手袋、一組のチェスセット、一組のトランプセット、一組のテーブルセット、一組の運輸機器セット、一組の飲食用ナイフ、フォーク及びスプーンセット、一組のテーブルセット、一組のディナーセット、一組の自動車用エアスポイラーセット、一組の自動車用シートカバーセット、一組の自動車用フロアマットセット、一組の自動車用ペダルセット、一組の自動二輪車用カウルセット、一組の自動二輪車用フェンダーセット、一組の車載用経路誘導機セット、一組のオーディオ機器セット、一組の車載用オーディオ機器セット、一組のスピーカーボックスセット、一組のテレビ受像機セット、一組の光ディスク再生機セット、一組の電子計算機セット、一組の自動販売機セット、一組の医療用エックス線撮影機セット、一組の門柱、門扉及びフェンスセット等が挙げられます。
- 直接審査(請求不要):意匠特許出願が書類を完成させて受理されると、審査委員会は意匠図や図面に開示された事項の外観を審査します。 1 つの意匠に違反した場合、1 つの出願は却下されます。特許の意匠が不明瞭な場合、明細書または図面の分割または補正を申請する期限内に、出願人に審査請求の通知が送られます。 「グループデザイン」の要件を満たしている場合、申請者は「グループデザイン」に修正することもできます。 期限内に回答書を提出しなかった場合、分割・補正申請を行わなかった場合は、一意匠一出願の規定に違反するとして却下されます。
- 特許表示義務:特許権者またはライセンシーは、特許ラベルおよび特許番号を特許商品または包装に貼付しなければならない。このようなラベルが貼られていない場合、その製品が特許製品であることを他人に知られず、特許権を侵害することになる。特許権者またはライセンシーは報酬を請求することはできません。ただし、特許を取得していない商品に任意に特許マークを付けることはできません。
意匠 |
保護對象 | 物品の全部又は一部の形状、模様、色彩又はこれらの結合であって、視覚に訴える創作、物品に応用するためのコンピューターアイコン(icons)、グラフィカルユーザインタフェース(GUI)及び組物 |
保護期間 | 出願日から15年間。 |
優先権主張 | 最初の外国出願日に基づいて6ヶ月以内。 |
実体審査 | 出願完了後に直ちに審査を進む。直接審査(請求不要)。 |
意匠特許を付与する意匠要件としては、「産業上の利用可能性」、「新規性」及び「進歩性」を満たすことが挙げられます。
意匠特許に係る保護対象例:
意匠登録出願必要書類
(1) 願書、意匠説明書及び図面
対象:すべての出願
説明:意匠説明書には、「意匠の名称」「意匠に係る物品の用途」及び「意匠の説明」を記載すべきです。「意匠の名称」は、意匠に係る物品や用途を明確にするものであって、関係のない文字を付けてはなりません。
「物品の用途」には、意匠や図面に係る内容をよく明瞭にするように記載します。「意匠の説明」には、意匠の形状、模様、色彩又はこれらの結合などに係る説明を補足的に記述します。例えば、以下に示すことについて、明確に説明しなければなりません。
A. 図面には意匠が主張しないとする部分を含んでいる場合、その図面における意匠が主張しないとする部分を説明すべきです。
B. 物品に応用するためのコンピューターアイコン(icons)及び図形化利用者インターフェイス(GUI)に連続的な動態変化がある場合、その変化の順序を説明すべきです。
C. 同一または対称である図面を省略する場合、その他の事由により図面の一部を省略する場合、その省略された図面を説明すべきです。
意匠の図面は、意匠権の客体(意匠法の保護対象となる物品等の形状等)を、第三者においても権利の客体である形状等を正しく理解できるようにするための図面です。一般に、意匠が立体である場合は斜視図を、意匠が連続した平面である場合はユニット図を含まなければなりません。
現実の立体物である場合には、斜視図、六面図(つまり、正面図、背面図、左側面図、右側面図、底面図、平面図)を含む意匠の図面を提出するが、ユニット図、使用状態参考図、又はその他補助図を一緒に提出することができます。
(2) 出願人の氏名又は名称(社名)、国籍、住所
対象:すべての出願
説明:願書には、(繁体字)中国語で表記する出願人の氏名又は名称、国籍、住所を明記しなければならなりません。
中国語で表記する社名は、出願、審査や登録に係る連絡や検索などの手続上の便宜を図るために願書に付記されたものであって、特許権利に何らかの悪い影響を与えることはありません。
同一の出願人が複数の出願を前後または同時にする場合には、同一である中国語表記を使うことは望ましい。
(3) 創作者の氏名、国籍
対象:すべての出願
説明:願書には、(繁体字)中国語で表記する考案者名を明記しなければならなりません。出願後においては、その中国語で表記する創作者名に対し、訂正を請求することができます。
その訂正をする際に、訂正前後の創作者名が異なることにも関わらず、譲渡証書の提出が不要です。
(4) 委任状
対象:台湾に住所又は営業所がない者によるすべての出願
説明:所定の書式はありません。
委任状に対する公証・認証は不要です。
外国語委任状を提出する場合には、当該外国語委任状およびその中訳を併せて提出しなければなりません。外国語委任状は、日本語または英語の委任状に限られます。
包括委任状または個別委任状は承認されますが、個別委任状による出願の場合には、出願1件ごとに対し、個別委任状を一枚提出しなければなりません。
(5) 優先権証明書(出願日、出願国及び出願番号)
対象:優先権の主張を伴った出願のみ
説明:優先権証明書は、最初に出願した第一国・地域への出願日がその後に出願した他の国・地域(台湾)での審査上の判断基準日となることを証明する書類です。
優先権を主張しようとする場合、願書には、優先権主張の基礎となる外国出願における出願日、出願国及び出願番号を明記すると共に、優先権証明書(基礎出願の写し)を提出することが必要ですが、優先権書類の電子的交換の場合に、優先権証明書の提出を省略することも可能です。
台湾智慧財産局は、2013年12月2日から日本国特許庁との間で、特許出願及び実用新案登録出願に係る優先権書類データの電子的交換(二庁間PDX)を行っています。また、2022年1月1日から、2022年1月以降に台湾智慧財産局に出願された意匠登録出願(優先権主張の基礎となる、日本国特許庁への意匠登録出願の出願日が2021年12月31日以前の場合を含む)に係る優先権書類データの電子的交換(二庁間PDX)が可能となりました。
優先権証明書の提出は、その最初の外国基礎出願の出願日(優先日から16ヶ月以内に行うことが求められます。
出願時の過失により優先権を主張できなかった場合(最初の出願日および受理国名またはWTO加盟国名の記載に不備があった場合)、最先の優先日から16ヶ月(意匠の場合は10ヶ月)以内において、(1)回復請求手数料の納付、(2)優先権基礎出願の関連データの明記、および(3)優先権証明書原本の提出を以って、優先権主張の権利回復をに請求することができます。
(6) 新規性喪失例外の主張
対象:新規性の喪失の例外を主張する場合のみ
説明:出願人の意図(本意)による公開または意図(本意)に反する公開(漏洩)について、新規性喪失の例外規定の適用を受けることができます。
意匠の新規性喪失の例外規定の適用を受けるためには、
(1)意匠の新規性を喪失した日から6ヶ月以内に特許出願を提出することが必要です。
(2)出願と同時に、新規性喪失となる事実及びその事実の発生日を明記して、意匠の新規性喪失の例外規定の適用を受けようとする旨を記載した書面を提出し、
(3)出願の際に、意匠の新規性喪失の例外規定の適用の要件を満たすことを証明する書面を提出する、必要があります。
新規性喪失の態様は、次に示すいずれかのことが挙げられます。
- 実験のために公開されたこと
- 刊行物で発表されたこと
- 政府が主催する展覧会又は政府の認可を受けた展覧会で展示されたこと
- 出願人の意図に反して漏洩したこと
(7) 分割出願
- 請求しようとする意匠は一意匠や一物品(一用途)に満たしていない場合:
台湾特許法の規定によれば、意匠出願案には実質的に2つ以上の意匠を含む場合、一意匠一出願という要件を満たしていません。そういう問題を克服するために、出願人は分割出願をすることができます。例えば、下記に示すのを例として挙げられます。
a) (一意匠でないか又は一物品でない)2つ以上の意匠または2つ以上の品目を含む意匠出願案。
b)(一組の意匠でない:販売または使用に異なる)2つ以上のカテゴリ又はアイテムを含む組物意匠出願案。
c) (複数の意匠)同一又は類似の意匠が複数ある意匠出願案。それらの意匠を分割するか、一部の意匠を削除するか、一部の意匠を「派生意匠」として変更出願することができます。
原の意匠出願案の明細書又は図面には、実質的に2つ以上の意匠を含む場合、出願人は、明細書に開示された複数の意匠を分割して別の案として出願することができます。例えば、下記に示すのを例として挙げられます。
a) 出願当初の意匠図説における「参考図面」に明示された物品または意匠を以って
b) 出願当初の意匠図説に明確に開示された物品のコンポーネント(構成要素)の1つを以って
c) 出願当初の意匠図説の開示によって裏付けられる、当初出願の請求範囲と異なっている意匠を以って、(例えば、図面の実線の一部を点線に変更した意匠、または図面の一部を変更した意匠、点線を実線に変更した意匠、など。)
ただし、分割出願する意匠は、必ず「原出願時の説明書又は図面に開示された範囲を超えないこと」という基準を満たさなければなりません。
また、意匠出願に係る分割請求は、適用時期(タイミング)として、元の出願が再審査にて査定された前に行われなければなりません。つまり、原の意匠出願が付与査定された後になる場合、または再審査が拒絶された後になる場合、分割出願を請求することはできません。よって、分割出願は、審査している途中の期間において請求してはいけません。
フローチャート